<米男子ゴルフ:マスターズ>◇2日目◇8日◇米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7435ヤード、パー72)

 【オーガスタ=木村有三】日本人アマチュアとして初出場した松山英樹(東北福祉大2年)が、快挙を成し遂げた。73と踏ん張り、通算1オーバーの145、43位で予選通過を決めた。19歳1カ月での決勝進出は日本人史上最年少。日本人アマの4大メジャー予選通過も史上初。池田勇太(25)は通算4オーバー、藤田寛之(41)は同5オーバーで予選落ち。ロリー・マキロイ(21=英国)が通算10アンダーで首位を守った。

 思わず、テレビの前で万歳した。ホールアウトから約5時間30分後の午後7時過ぎ。日本人アマチュアとして初めてマスターズに出場した松山の「日本人最年少予選通過」が確定した。レンタルハウスに戻ってテレビ観戦しながら、ネットでも各選手のスコアをチェックしていた19歳は、自然と両腕を突き上げた。

 松山

 ドキドキだったので本当にうれしかった。ソファに寝転がって、イエ~イッってやりました。

 無欲で、ひたむきなプレーが快挙をもたらした。「予選のことは全然意識していなかった。無理だと思ってたんで。普通に今まで通りにやりました」。2日間で難度1位の11番パー4で、残り195ヤードから1メートルにつけた。グリーン左の池に曲げてボギーとした同組の08年大会王者イメルマンとは対照的に、会心のバーディー。16番でも手前エッジから6メートルを沈めて、力強く右手を握りしめた。難コースで慎重になる世界の強豪プロに、思い切りの良さで対抗。パトロンから何度も大歓声を浴びた。

 4歳からゴルフを始め、初めて見たマスターズが5歳だった97年大会だった。12打差をつけて圧勝したウッズに目を奪われた。小学生になると、父幹男さんに「家の中にパット練習場を作って」とおねだり。初めは廊下に作ったが納得せず、6畳の部屋をつぶして人工芝を張ってもらい「英樹専用グリーン」が完成。ウッズを夢見て、球を転がし続けてきた努力が、“ガラスのグリーン”といわれるオーガスタで報われた。

 7日夜に宮城で起こった余震で、大学がある仙台でも停電の被害があった。それでも「松山が頑張っている姿を見たい」と、早朝から自家用車のテレビで、応援する知人もいたという。東日本大震災の被災者の心境を考え、最後まで今大会に出場するかどうか迷ったが、後押ししてくれたのが大学関係者や家族、そして多くの応援してくれる知人たちだった。精いっぱいのプレーで被災者へ恩返しを誓っていた松山は「(恩返しが)できたのかなと思います」と控えめに笑った。

 全米アマや全英アマの優勝者ら他の4人のアマチュアは、すべて予選落ちした。日本人史上初のベストアマが早くも確定。日本人アマが4大メジャーで決勝に進むのも初めてだ。残り2日間は、来年の出場権を得る16位が新たなターゲットになる。「16位に入るのは相当難しいかもしれないけど、目標は高く持った方がうまくなる。気を引き締めてがんばります」。被災地への思いを抱きながら、世界のトッププロに交じってチャージをかける。